2024/10/05 杉井ギサブロー監督『銀河鉄道の夜』

アニメ『銀河鉄道の夜』を見るのは本当に久しぶりでした。
杉井ギサブロー監督は、すらりとした素敵なおじさま。
小黒祐一郎編集長に問う暇も与えず、この作品を手掛けることになった経緯から説き始めて、連綿と、ていねいに、お話ししてくださいました。
いのちは脈動
映画のはじめ、空から、宙から、ジョバンニのいる学び舎へ大きく揺れながら近づいていくシーンが秀逸です。
美しく、どこでもない、悲しさにふるえているような、素晴らしい映像です。
監督のお話によると、原作者の宮沢賢治がいのちは脈動だと考えていたということで、宇宙から、いのちの側から見て、あのような揺れながらズームしていくかたちにしたとのことでした。
音楽も、担当していただいた細野晴臣さんに「揺れてください」とお願いしたとおっしゃていました。
深みに降りていく階段
街中の階段を下りていくシーンが何種類か繰り返されます。
学校が終わった後、活版印刷所に仕事に行くとき、街中の長い階段を下りていきます。
お父さんは北の海に出ていてずっと留守で、病気のお母さんは床に臥せっていて、ジョバンニが働いて日々の生活を担っています。ヤングケアラーなんです。
そのタイトな、逃れられない、寂しくて辛い気持ちを具現化するように、階段を下りていく。
活字拾いの仕事を終えると硬貨をもらって、活版印刷所を出て扉を閉め、暗い階段を上っていく。
また、白鳥の停車場で20分停車。その駅舎のシーンが素晴らしいのですが、それはちょっと置いといて、今度はカンパネルラとふたりで、延々と階段を下りていく。
カンパネルラといつまでも一緒にいたい気持ちそのままに、階段はとっても長い。
長くなるのでやめます。
言葉にならない様々な意味がこれでもかと込められていて、見るたびにすごい表現だと感心しています。
今日のお話の中では階段について言及されませんでしたが、宮沢賢治の原作にも階段は書かれていないし、原案のますむらひろしの漫画にもまったく描かれていません。杉井監督のこの映画にだけ描かれるシチュエーションです。
うまいなあ、すごい才能だなあ、と、つくづく思います。
言いたいことは多々ありますが、いずれまた。
みる かなた
◇ ◇ ◇


思いがけず、トークの最後に小黒編集長から、撮影許可がおりました。
まさか撮影可だなんて思ってもみませんでしたので、慌ててしまいまして、ぼけていて申し訳ございません。
新文芸坐×アニメスタイル Vol.182
『銀河鉄道の夜』 1985年 107分 35㎜
2024年10月5日(土)14:00(終映15:55)
新文芸坐
上映後トーク
監督・杉井ギサブロー
アニメスタイル編集長・小黒祐一郎